三重県暴力団排除条例を一部改正

2015年7月2日、毎日新聞(伊賀版)

三重県警の名張署、伊賀署が啓発

三重県暴力団排除条例の一部改正に合わせ、三重県警の名張警察署と伊賀警察署は、周知キャンペーンをし、それぞれ商業施設でチラシを配り、理解を呼びかけた。

学校の近くの暴力団事務所を禁止

暴排条例は市民が営利目的で反社会勢力(反社会的勢力)と関わり、暴力団の資金源になることを制限するため、三重県では2011年4月に施行。今回の改正で学校、児童福祉施設などの建設が決まった段階で、周囲200メートル以内に暴力団事務所を開くことができなくなった。また、市民が反社会勢力と知りながら協力した場合、三重県公安委員会は市民と暴力団を調査、勧告、公表の対象にできるようになった。

「暴力団排除を」

この日、マックスバリュ名張店(名張市蔵持町原出)で街頭啓発した金川雄一・名張署長は「市民に知ってもらい、暴排の機運を高めたい」と強調。一方、マックスバリュ上野店(伊賀市四十九町)では、伊賀署の大久保秀樹・刑事課長が「暴力団情報の収集に、市民や関係機関と連携を深めたい」と語った。

反社会勢力(反社会的勢力)どう見分ける? 暴排条例全面施行 接客業など困惑

2011年10月10日、産経新聞など

全国で施行

三重県など全都道府県で、反社会勢力(反社会的勢力)に対応するための暴力団排除条例が施行された。市民生活や企業活動から暴力団を締め出すことを目的としている。2011年10月1日に東京都と沖縄県で施行されたことで、全国足並みがそろった。

島田紳助の芸能界引退
接客業は「見破り方が分からない」

反社会勢力幹部との交際を理由に芸能界引退に追い込まれた島田紳助さんのケースもあり、産業界では暴力団排除の機運は一段と高まる。ただ、流通・小売りなど接客サービス業を中心に「どうやって暴力団関係者と見破ればいいのか…」といった戸惑いの声も漏れている。

企業名公開のケースも

暴排条例は「暴力団など反社会勢力(反社会的勢力)の活動を助長し、利益を供与する行為」を禁じており、違反行為に認定されると、企業名や個人名が公開されるケースもある。

暴力団員を見分ける難しさ

とはいえ、実際の条例運用には、暴力団員を見分ける難しさがつきまとう。大丸松坂屋百貨店の広報担当者は「最近は見た目で暴力団員と分かる人は少ない」と困惑を隠さない。不特定多数の人が来店する小売店は、対応を一歩間違えば、経営に影響を与えかねない。

企業の取り組み

百貨店

大阪府暴力団排除条例が4月に施行されたことを受け、大阪百貨店協会は2011年夏、組織名が書かれた中元や歳暮を受注しないことを決めた。大丸松坂屋百貨店も、のし紙に暴力団名などを書くよう求められれば断っているが、暴力団関係者が個人名で注文する場合は防ぎようがない。「警察当局には、関係者の詳細なリストを出してもらいたい」と求めている。

家電量販や鉄道の対応

家電量販のエディオンの広報担当者も「自分から反社会勢力を名乗る人は少なく、来店客に質問するわけにもいかない」と困った様子。鉄道など運輸事業者も「乗客の身分を調べるのは難しい」(京阪電気鉄道)と頭を抱える。

個人情報保護法による情報入手の壁

さらに、2005年(平成17年)の個人情報保護法の全面施行後、企業側が顧客の個人情報を調べにくくなったという「情報入手の壁」が立ちはだかる。

賃貸マンション

大手旅行会社の関係者は、「申し込みの際に得た個人情報を調べても、個人情報保護法に触れないだろうか…」と悩みの種は尽きない。大手賃貸マンション業者も「警察は個人情報の保護を理由に入居者の情報を提供してくれない」と嘆く。なかには「暴力団から嫌がらせを受ける」と尻込みする企業も少なくない。

入れ墨は服で隠す

一方で、「入れ墨が見える来場者には、服装で隠すよう求め、応じなければ退場も促している」(USJ)や、「暴力団と分かったら契約しない。その後に判明したら契約解除する」(積水ハウス)など、毅然(きぜん)とした姿勢を示す企業も出てきた。

警察の指導

ただ、産業界の暴力団排除の動きを本格的に進めていくには、「警察当局の具体的な指導とさらなる支援が欠かせない」とみる専門家は多く、積極的な官民の連携が求められそうだ。